詩と哲学的エッセイ〜楽に生きるヒント〜

心から湧き出た詩から楽に生きるヒントを読み解きます。

自分のベールは自分しか外せない。詩子の詩481

〜春は来る〜

 

どれだけ長いこと目を瞑って

生きていたのだろう

どれだけ長いこと耳を塞いで

ここにいたのだろう

 

世界が私をどれだけ

愛しても私の耳には届かなかった

世界がどんなに私を優しく見つめても

私の心に届かなかった

 

濁ったベールをかけられた花嫁は

黒い涙を流しながら

本物の愛を探し続け

どこにもないと毎日泣いた

 

春はもうすぐそこに

やってきているというのに

庭の小鳥たちは楽しげに

歌っているのに

 

どれだけ長いこと眠りについた

眠り姫は目を覚ます

どれだけ長いこと氷の世界に

住んでいても又目を覚ます時

 

太陽の眩しさに眼を細め

夢から覚めたように世界は

私を待っていた

待たせた私を咎めることもなく

 

春が来ていたすぐそこまで

ベールの隙間から声が聴こえた

小さな喜び小さな微笑み

花嫁のベールはもういらない

 

祝福の時、世界は笑った

小さな喜びのブーケを運んで

みんなが私に向かって投げた

 

花のいい香りと歓声が耳にこだました

急に目の前が輝いて

世界は笑っていた

 

 

f:id:Umino-Utako:20220223134454j:image

 

春はもう来ている。そこまで。

何か問題があったり悩んでいたり

何かに執着してしまっていつも頭の中がそれで占領されてしまっている時には

今ある景色は見ているようで見ていない。

色も匂いも感じていない。

感じるわけには行かない。

感じられれば今ここにいると言うことだ。

悩み、執着に溺れる時はそこにいたい自分が半分は占めているから。

そこから出るには自分から自分の被ったベールを脱ぎ捨てる必要がある。

脱ぐのに抵抗を感じることがあると思う。

でも、必ず脱いでもいいと感じられる時が来る。

そして脱いだ先には今までここにあったものを再確認することになる。

風の匂いや、いつもの道の本当の色合いや景色。

その時、ようやくベールを被ってしまっていた自分に気づくこともあるのだ。

だから、その時が来る事を信じて。